2012年12月5日水曜日

ナガラ族が損する


『明るい窓』(病院職員ニュースレター)6月号
チャプレンからのメッセージ


チャプレンらしくないと思われるだろうけれど、僕はちょい悪なゲームを考えたことがある。「スマホンビ・ハンター」と名付けたゲームである。「スマホンビ」というのは、「スマホ・ゾンビ」の略――すなわち、スマートフォンや携帯電話などに目をくぎ付けにしながらよたよたと道やホームを歩く人たちのこと。

ゲームのやり方は、ハンターが近寄ることや足音を出すことでスマホンビを驚かせようとする。向こうが何か反応するとポイントを取得する。びびるともっと高いポイントを得る。スマホンビが「おっ!」とか声を出したらさらにボーナスポイントがもらえる。

ただし、ハンターが声を出したり接触したりするのは反則(というか、逮捕されるおそれがあるのであまりよろしくない)。

実際にこのゲームを(あまり)やったことないけれど、たまには頭の中でこういうことを想像している。チャプレンにもイジワルな部分があるってこと。

まあ、懺悔はそこまでにしておこう。僕は最近「ナガラ族」のことを考えている。スマホンビ以外にも「ナガラ族」のメンバーはあちこちに現れる。そわそわと携帯電話をチェックしながら友人とお茶をする人。テレビを見ながら夕飯を食べる家族。週末、ずっとiPadをいじりながら子どもと(一応)一緒にいる父親。などなど。

なんと、コンピュータモニターばかりを見ながら患者さんとのやり取りをする医師もいるらしい。僕は自分の目で見たことがないから、これはただの都市伝説かもしれない(笑)。

他事をしながら何かをするというのは、素晴らしい才能だと思う。そうやって生産性を高めて、総じて仕事量を増やすことができる。僕ももっとできるようになりたい!

でも合理性があまり求められていないときもある。逆に量よりも質の方を大事にすべき場合がある。特に人とのコミュニケーションや交流においてそうだと思う。こういう場合は、ナガラ族の人たちが損すると思う。

相手の話を聴く、相手に自分の思いや気持ちを伝えるとき、何かをやりながらだとあまりうまく行かない。目を合わせて、心を合わせて、「今の瞬間は100%わたしたちのためにある」という態度で向き合うと、本当のコミュニケーションが初めて生まれるのだと思う。

たとえ忙しくてバタバタしている時期でも、今、この瞬間、時間はたっぷりあるかのように相手に向き合えるスキルも素晴らしいものだと思う。このように一心に向き合う1分は、ナガラ族の10分よりずっと意味があると思う。

僕も、こういうふうに同僚、患者さん、家族とよりよいコミュニケーションを目指したいなと思う。

最後に、スマホをやりながら歩く方にひとことを言わせていただく:気を付けて!狙われているかもしれないから...

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