2012年5月号「チャプレンからのメッセージ」『明るい窓』病院の職員向けニュースレター
日本のお笑い芸人の中で出川哲朗という大ベテランがいる。「リアクション芸人」に分類されるだろう。世界各地に派遣され、ライオンの口に頭を入れたり、山間のもろい縄の橋を渡ったり、3千メートルからスカイダイビングをしたり、昆虫を食べたりするなど。バカバカしいけどつい見てしまう。
出川は「天然いじめられっ子」としてバラエティ番組にもよく出る。へまばかりして集団いじめを招く。そして袋だたきにされる出川は、いきなり両手のひらを上にして天に目を上げて「ワイだよワイ!」という嘆きを吐く。この一発ギャグで必ず笑いを取る。僕のも。
医師、看護師などの医療関係者は「What」(何)と「How」(どうやって)によく取り組む。患者さんの疾患は何なのか。どうやってそれを治せるのか。
僕はチャプレンとして「Why」(なぜ、どうして)という質問に付き合うことが多い。どうしてわたしがこの病気になったのか。なぜ妻と別れなければならないのか。そしてもっと基本的なレベルで、どうしてわたしが生れたのか。なぜ俺が生きているのか。よくそういう問い掛けに付き合うのだ。
こういう質問には、明快で、100%満足できるような答えがなかなか出ない。しかしそれでも、Whyというのは大切な疑問。人間らしい疑問。投げ掛けがいのある疑問だと思う。
皆さんにも、できればWhyという問いかけをいとわないでほしい。もちろん、患者さんのWhyをはぐらかさない方がいいと思う。医療関係者が解決を追求するのは当然。でも時々専門家としての立場を捨てて、同じ人間としてその嘆きであったり、慰めへの要求であったり、生きる意味への探求であったりする患者さんのWhyに耳を傾けてあげると、すでにその人の中に潜んでいた答えや閃きに気づいてもらえることは意外と多いかもしれない。
そして皆さんには、ぜひ自分自身に対してもWhyをどんどん投げ掛け続けてほしい。なぜ自分がこの世に生を受けたのか。どうして生きているのか。なぜ職場は聖路加になったのか。どうして今までのさまざまな経験をして来たのか。なぜある分野に特別な関心を持っているのか。どうして時間をかけてこのチャプレンメッセージを読んでいるのか(笑)。
などなど。
大切なWhyを探求することなく人生を送るのはもったいない!
Whyを投げ掛け続けると、自分自身の胸の中に潜んでいる、思いがけない答えに出会えるかも知れない。「ワイだよワイ!」
0 件のコメント:
コメントを投稿